2011年秋季低温工学・超電導学会 セッション報告

11月9日(水)
A会場 9:45-17:45

Y系電流密度/歪み 1A-a01-06 座長 土井 俊哉

本セッションでは、RE系線材の臨界電流密度特性に関して3件、歪み・機械的特性に関して3件の発表があり、活発な議論がなされた。
1A-a01:木内ら(九工大)はGdBCOコート線材のJc測定を電流と印加磁界の相対角度を変化させて行い、測定電流に平行に外部磁界を印加した場合
(縦磁界)は印加磁界が増加するに従ってJc値は緩やかに低下するが、その低下の程度は外部磁界を電流に直交するように印加した場合に比べて大幅
に低減されることを報告し、縦磁界下ではJcが大きく向上する可能性(縦磁界効果)があることを報告した。
1A-a02:菊池ら(東北大)は、実用GdBCOコート線材の臨界電流密度性とn値特性を広い温度、磁場範囲で測定し、60 K以下の温度領域ではBc軸では
イントリンジックピンニングが支配的、B//c軸では低磁場中でn値を制限する何らかのメカニズムが存在する可能性を指摘した。
1A-a03:井上ら(九大)は、BaHfO3ドープPLD-GdBCO線材のJcの磁場・印加磁場角度依存性を評価し、人工ピン未導入線材に比べてほぼ全温度・全磁場
領域でJcが向上し、Jcの角度依存性が低下していることを示した。またBaHfO3ドープはBaZrO3ドープIBAD-GdBCO線材よりも厚膜化に有利で、3μmまで
Jcの低下が無いと報告した。
1A-a04:山田ら(ISTEC)は、CVD-GdYBCO線材のIcの歪み依存性を測定し、その結果を報告した。また、成膜プロセスによる違いは無いこと、ハステロイ
基板を薄くすることで見かけのひずみ特性は向上するが真ひずみによるIc低下特性には変化が無いことを報告した。
1A-a05:長村ら(応用科学研)は、Spring-8の放射光を用いたX線回折測定により,Super Power社,AMSC社,KERI,フジクラ社製のYBCO,SmBCO,GdBCO
コート線材のひずみ測定を行った結果について報告した。
1A-a06:菅野ら(高エネ研)は,線材長手方向に<100>方向が揃ったGdBCO線材に比べ<110>方向が揃ったGdBCO線材のIcの引張ひずみ感受性が非常に小さい
こと,およびその原因が各ドメイン内のひずみ状態の違いによることを報告した。


Bi系/Fe系電流特性 1A-a07-10 座長 川越 明史

本セッションでは4件の発表があった。
住友電工の菊池らは、DI-BSCCO線材の最近の高Ic化開発について報告した。キャリアドープ状態が磁場中Icに及ぼす影響を調べ,オーバードープ状態にした方が,
ピン力が向上することを報告した。また,ポストアニールによるTcの向上効果について,ポストアニールは,粒内特性に影響を及ぼすとともに,鉛化合物が析出する
ために粒間特性にも影響を及ぼしていると報告した。また粒内と粒間それぞれのポストアニール温度によるピークが異なるため,両者のバランスをうまくとることで,
さらに高Ic化が可能であると報告した。
東大の下山らは,Bi2223焼結体の粒間・粒内の臨界電流特性に及ぼすポストアニール効果について報告した。粒間結合を意図的に悪くしたBi-2223焼結体に,還元
アニールと,キャリアドープ状態を変える酸素アニールを行い,その試料の磁化を測定することによって臨界電流特性を調べた。その結果,還元アニールの効果は,粒間の
特性を大きく改善していることを明らかにした。また,還元アニールを行った方が,酸素アニールの効果がより顕著になる傾向があると報告した。
東大の小畑らは,c軸配向Bi(Pb)2223バルク体における加圧焼成条件と臨界電流特性の関係について報告した。磁場中スリップキャスト法によりバルク体内部に
までc軸配向させたサンプルの臨界電流特性を調べ,ポストアニールまで行うと,無配向のサンプルよりも臨界電流特性が向上し,20 K,1 kOeでは25000 A/cm2というバルク体
としては高い臨界電流密度が得られたと報告した。したがって,磁場配向バルクでは,ポストアニールにより有効電流パスが大きく改善できる可能性があることを示した。
これらの結果から,強い粒間結合をもった結晶体には,c軸配向した組織が必要であると報告した。また,これらのサンプルのTcが多芯線材で観測されるよりも低かった
ことから,ポストアニール条件を最適化してTcを向上させることによって,さらに臨界電流を向上させることが可能であると報告した。
物材研の松本らは,(Ba,K)Fe2As2線材における組織とJcの磁場温度依存性について報告した。(Ba,K)Fe2As2線材の臨界電流密度はまだまだ低いものの,数T以上の
磁場中特性が良く,高磁界応用に適していると報告した。また現在の線材の組織観察の結果,未反応のFe,Asが残っており,これらをなくすことが臨界電流密度の向上の
ために重要であると報告した。


HTS応用電流特性 1A-p01-05 座長 七戸 希

1A-p01:斉藤(中央大学) SN転移型超電導限流器に用いるYBCO超電導薄膜の試料サンプルにおける過電流通電特性について報告があった。過電流
通電時に試料を非接触にした場合は短時間で試料が破壊したのに対し,FRPまたはアルミナブロックを接触させた場合には,熱拡散の効果により破壊
までの時間が延長されることを示した。今後,ブロックの接触圧力を最適化するなどの検討を行っていくとのことであった。
1A-p02:徳重(鹿児島大) 高温超伝導電流トランスによる高温超伝導導体の通電特性について報告があった。Bi2223線材5枚を積層したもの2本を
試料導体として使用し,トランス一次側と二次側の電流比の周波数特性を示すとともに,通電電流の大きさによって試料内の電流分布に違いが生じ,
試料導体のインダクタンスが変化することを示した。
1A-p03:二井(京大) 高温超伝導Roebelケーブルの三次元モデルと断面モデルによる電磁界解析について報告があった。三次元モデルの場合,断面
モデルでは解析不可能な転位箇所においても電流密度分布を解析可能であることを示し,併せて交流損失の分布についても示した。
1A-p04:馬渡(産総研) 超伝導ストリップライン検出器における電流分布について報告があった。ストリップを並列化構造にした場合に,発生する
パルス電圧にばらつきが生じる問題があり,その要因はストリップにおける不均一な電流分布であると考えられ,Pearl lengthとストリップ幅の大小
関係によりその説明が可能であることを示した。
1A-p05:中出(東北大) 奇数次高調波を含むひずみ波電流における交流通電損失の算出方法について報告があった。各周波数での正弦波損失の合計で
推定した場合は測定結果とは一致しなかったが,ひずみ波電流全体の最大値と最小値および局所的に存在する高調波ループの最大値と最小値から各振幅を
定め,1サイクルあたりの損失を合計することで測定結果と一致する推定値が得られることを示した。


11月9日(水)
B会場 10:00-17:30

HTSコイル化技術 1B-a01-05 座長 石山 敦士
1B-a01:坂井(東海大)らは、昭和電線、核融合科学研究所と共同で、TFA-MOD法YBCOテープ線材(長さ190 mm、幅5 mm)を20本用いた2 kA級電流リード
ユニットを10組作り、これらを組み合わせた集合型超電導電流リードを作製した。今回はその通電特性および熱侵入量の評価実験について報告があった。
1.5 kAから2.4 kAの通電特性を持つ電流リードユニットを10角形状のCu電極の外周部に並列に配置し、ボルト接続されている。液体窒素中で18 kA、10分間
の連続通電を行い、200μVの電圧発生が観測されたが安定な通電ができた。電圧は15 kAから上昇をはじめ20 kAから急激に上昇した。熱侵入は18 kA通電で
152 mW/kAと計算され、従来のガス冷却型Cuリード(1.2 W/kA)の約1/8程度の値となるとのことであった。
1B-a02:伊藤(東北大)らは、核融合炉用分割型高温超伝導マグネット(例えば、ヘリカルコイルの分割)や高温超伝導応用機器の簡易接続法として、高温
超伝導テープ線材を積層した導体のブリッジ式機械的ラップジョイントの提案・検討を行った。今回は、接続部の機械的強度の評価として、BSCCOおよびGdBCO
テープを1,2,5,10層積み重ねた場合の最上層のテープ線材の横圧縮応力―臨界電流特性を調べた。その結果、BSCCO導体の場合は、積層数により接合応力
の値に制限があることがわかった。一方、GdBCOテープでは400 MPaの横方向圧縮応力でも臨界電流の低下は観測されなかった。合わせて接続抵抗の評価実験
結果も紹介された。実際の運転環境ではもっと複雑で色々な方向の応力が加わるのではないかとの指摘があった。
1B-a03:横山(三菱電機)は、伝導冷却高温超電導コイルの冷却の検討に不可欠となるコイル巻線部の熱伝導特性を明らかにするため、コイル模擬試料を用い、
含浸、非含浸での熱伝導率の測定とコイル内温度分布の評価を行った。コイル模擬試料は、Y系テープ線材を模擬し、SUS304とC1050のクラッド材をカプトン
テープで1/2重ね巻きして絶縁した20 mm長のものを20層積層した。テープ面に平行、垂直方向の熱伝導率を測定。非含浸の試料は導体とカプトンを一体化して
いるとして仮定して計算した値に対して、2桁(平行)、1桁(垂直)低かった。塗り巻き試料は、平行方向では大幅に改善されたが、垂直方向では顕著な改善は
見られなかった。真空含浸試料では、平行方向は約1/2程度となり、垂直方向ではほぼ計算値と同じ特性が得られた。Y系コイル製作に有効なデータが示されたと
言える。
1B-a04:森部(鹿児島大)らは、ピックアップコイルを用いた高温超伝導コイルの非接触運転・監視システムについて報告した。発表者らのグループは超伝導
コイル周辺のポインチングベクトルを観測することにより、測定したエネルギーフローからコイル内の異常を監視する方法を提案しその有効性の評価実験を行って
きた。今回は、コイル巻線内に局所的に異常を発生させるために、コイルボビンに小さな穴(9×3 mm)を12個(3×4)開け、ボビン裏側から窒素ガスを噴き
つけることのできるBi-2223サンプルコイルを作製し、50 Hz、90 A振幅の交流電流通電状態で実験を行った。その結果、高負荷率(Icの78%の電流)でも測定可能で
あること、コイル両端電圧よりも早く異常を検出できることが示された。
1B-a05:淡路(東北大)らは、PLD-Gd123パンケーキコイル(内径:89.8 mm、外径:176 mm、厚さ:5.5 mm、ターン数:147、線材長:61.4 m)を製作し、バック
アップ磁界印加用8 T大口径(室温ボア径:360 mm)無冷媒超伝導マグネット内での4.2 K(液体ヘリウム中)強磁場特性評価実験を行った結果について報告した。
8 Tバックアップ磁界中で420 Aまで励磁したが、加わる基板当たりの応力(BJR)は約530 MPaであり劣化のレベルには至らなかった。結果として線材の臨界電流
近傍までの通電が確認され、コイルIcはその磁場角度依存性に現れるBc近傍のピーク幅で制限されていることが示唆されるとのことであった。テストコイルは
エポキシ樹脂で真空含浸されている。冷却特性は含浸により確保されるが、一方でCoated conductor特有の剥離の問題が生じてくる。本学会でも関連の発表・議論が
多くなされたが、コイルの目的・用途に応じた対処法が明確になりつつあるのではないかと感じた。


送電ケーブル(1) 1B-a06-09 座長 浜辺 誠
本セッションでは,超電導送電ケーブルについて4件の発表があった。
1B-a06:大屋(住友電工)らは長尺の三心一括型超電導ケーブルの臨界電流測定において、往復通電で生じるケーブル毎の漏れ磁場の影響を抑制する方法
として、通電電流の変化速度を上げてシールド層に遮蔽電流を誘起することで、測定される臨界電流が線材本来の臨界電流の総和に近づくことを実験的に
確認した。
1B-a07:我妻(産総研)らは、超電導ケーブルに過電流が流れたときの冷媒の温度分布を数値解析するプログラムに、銅フォーマの中空部分のサブクール
窒素のエンタルピーを新たに計算に加えることにより、従来よりも試験結果に近い計算結果が得られることを示した。
1B-a08:王(早大)らはYBCO線材の過電流などによる局所的な特性劣化の原因の一つとして、線材の銅安定化層の厚みのばらつきの影響を数値解析し、安定化
層の厚みのばらつきが局所的な温度上昇を引き起こし、さらに熱応力・歪みにつながることを示した。
1B-a09:李(京大)らは細線化したYBCO線材を用いたケーブルの低ACロス化を明確にするために、同じケーブル径で従来幅の線材を使用した場合と数値計算で
比較し、細線化に加えて線材間のギャップが狭まることで効果的にACロスが低減する計算結果を示した。


加速器(1) 1B-p01-02 座長 高畑 一也

本セッションでは,YBCOコイルに誘導される遮蔽電流についての2件の発表があった。
1B-p01:福田(上智大)は,遮蔽電流による磁場ドリフトを抑制する方法として,コイル温度降下と電流掃印逆転法を組み合わせることを提案し,
解析によりその有効性を確認した。実験検証を含めた研究の進展が期待される。
1B-p02:植田(阪大)は,遮蔽電流を考慮した3次元磁場解析モデルを開発した。この3次元モデルは,異形コイルへの適用はもちろん,遮蔽電流に
対する接続箇所の影響が分かるなど,今後幅広い研究に適用が可能であろう。


震災関連 1B-p03-04 座長 前田 秀明

1B-p03と1B-p04ではNIMSの清水から東日本大震災における930 MHzNMRと1030 MHz NMRの被災状況の報告があった。本震の震度は6弱、余震は5強であった。
930 MHzNMRでは、アンカーボルトのゆるみなどがあったが、磁石特性には変化がなかった。但し、2 K槽と4 K槽の間の安全弁の開口が数ミクロン変化した為に、
液体ヘリウム蒸発量が1割増加した。1030 MHzについては、励磁していなかったが、磁石自体の被害は大きく、内層ボアーチューブなどが変形・断裂し、クライオ
スタットの真空が破壊されて、液体ヘリウムや液体窒素が蒸発したとのことであった。
最後に、プログラムには無かったが、理化学研究所NMR基盤施設の被災状況を前田が紹介した。30台近いNMR装置を備える施設である。大きな損害はなかったが、
除振台底面が動き磁石が傾く事故が数件あった。NMRは除振台にのる構成であり、この点が地震に対する弱点になる様である。




11月9日(水)
C会場 9:45-17:45

ITER・LHD 1C-a01-06 座長 濱島 高太郎

本セッションでは,ITERのサンプル試験で新たに見つかった素線座屈に関する講演と,LHDのこれまでの試験をまとめたものである。
「1C-a01:濱田(原子力機構)」,「1C-a02:梶谷(原子力機構)」の発表では,ITER用CIC導体の試験がスイスのSULTAN試験装置で行われ,今回の試験では
予想を下回る特性劣化の現象が見つかった。導体断面を切断して観察すると,大電磁力が加わる方向と反対側に大きな隙間が発生し,そこで一部の超電導素線が
座屈し,破断していることが分かった。この現象の解明と対策を提案し,今後試験を通して改善する計画が報告された。
「1C-a03:高畑(NIFS)」の発表では,強制冷却導体の圧力損失の経年変化を調べた結果,不純物による影響が大きいことが分かった。
「1C-a04:三戸(NIFS)」の発表では,LHD冷却制御システムが20年近くになり,信頼性の向上のために,拡張機能などを有する新しい構成のシステムに改造を
今年度に実施し,来年度から新システムへの移行をする計画である。
「1C-a05:今川(NIFS)」はLHDヘリカルコイルの安定性の実験データに対して種々の解析を行っており,温度分布などは比較的実験結果を反映していることが分かった。
「1C-a06:西村(NIFS)」は中性子照射による超電導材料の高磁界中での特性を調べるために,15.5 Tを発生できる超電導マグネットを東北大学の大洗センタの管理
区域に導入し,それを用いた試験結果では,照射試料の臨界温度が高くなることが示された。


JT-60SA 1C-a08-10 座長 西村 新

JT-60SAのセッションでは3件の報告がなされた。一件目はJAEAの神谷宏治氏の発表で、「JT-60SAサーマルシールドの設計と試作」と題するものであった。JT-60SAの
サーマルシールドの設計を紹介し、特にサーマルシールドパネル間の接続継ぎ手の強度特性について報告した。二件目の発表は「JT-60SA中心ソレノイド導体の繰り
返し励磁による分流開始温度の経時変化」と題してJAEAの村上陽之氏が行った。コイル励磁時に発生する電磁力を模擬した繰り返し通電を4,000回実施し、電流分流
開始温度(Tcs)の経時変化を測定した。その結果、試験導体は十分高いTcsを持つこと、繰り返し励磁による劣化は生じないことが示された。三件目の講演は、
「JT-60SA CS導体の製作とEF導体の東日本大震災による被災状況」と題して、JAEAの木津要氏が行った。角型丸穴形状のCS導体の製作状況について報告され、
引き続きEF導体の震災による被災状況について報告された。


電気機器(1) 1C-p01-05 座長 金 錫範

本セッションでは、超電導回転機に関する3件の発表と限流器関連の2件、計5件の発表と活発な質疑応答が行われた。
1C-p01 山田(超電導組合):Y系超電導線材を界磁コイルの巻線とする500 kW (1800 rpm)および5 MW (200 rpm)級の高温超電導モータ設計が発表された。設計に
おける一番大きいポイントとして界磁コイルの形状を逆傘形状にすることで使用線材の長さを低減しながら同じ発生磁場強度が得られることが可能であることが示された。
1C-p02 牧(東京海洋大学):風力発電用の大容量低速仕様の高温超電導同期発電機の電気設計について発表された。今回は、発電機の出力容量が異なる2~
15 MW級の高温超電導発電機について固定子体格を固定子の外径を用いることで比較・検討された。評価パラメータとしては、発電機の重さと効率、そして使用線材長
が用いられ、出力容量に伴う最適形状が提案された。
1C-p03 北野(京都大学):かご形誘導機の2次巻線を超電導化した、高温超電導誘導同期機の弱点である可変速度制御の安定性を高めるための起磁力依存非線形
抵抗を利用した制御方法が説明された。その後、20 kW級の試験機による実証実験結果が動画で紹介され、無負荷・負荷状態での加速試験において4秒以内で同期回転
が得られたことが報告された。
1C-p04 山崎(産総研):抵抗型超電導限流器として、矩形薄膜限流素子による試験結果が報告された。薄膜限流素子から構成される限流器の大きい問題点であるホット
スポット発生を回避させる方法として、並列接続された各インダクタンスLに薄膜限流素子を直列接続させた構造について実験的に検討された。薄膜限流素子は
自作のものと市販のもの両方について検討された結果が報告された。また、分流保護層による接触抵抗はそれほど大きくないとの回答があった。
1C-p05 亀田(電中研):ループ配電系統におけるSN転移型超電導限流器の最適配置に関して、主に3つのループ配電モデル関する系統解析結果が報告された。また、
実際の超電導限流器の投入に関する質問に対して、今後は配電系統が複雑化されることが予想されるので実現可能性は高いとの回答があった。




11月9日(水)
D会場 9:45-17:45

計測(1) 1D-a01-06 座長 木村 誠宏

計測(1)の講演では、次の6件が報告された。
1D-p01 液体水素用MgB2液面センサーの熱応答特性について報告された。液面センサーとして実用化が近い印象を受けた。
1D-p02 MgB2液面センサーを用いた液体水素のスロッシング応答特性について報告された。0.1 sまでの応答特性が示されていた。今後予定されている3D計測
結果について期待したい。
1D-p03 樹脂含浸された高温超伝導コイルの熱伝導についてシミュレーションと実験結果と比較検討について報告された。巻厚方向の複合した素材の熱伝導率について
質問が有った。この点について、明確な解釈とモデル化を希望したい。
1D-p04 HTS-SQUIDを用いた小型磁化率計の開発について報告された。簡潔はセットアップで純水の磁性を測定できることを示していた。
1D-p05 永久磁石を用いた超低磁場SQUID-MRIシステムの開発についての講演であった。サンプルの取扱法を改善することによりS/N比が改善されることを報告した。
1D-p06 HTS-SQUIDの性能について報告された。HTS-SQUIDのそのもの特性よりもそれを保持するための電磁遮蔽等に関して開発要素が有る印象を受けた。


医療応用 1D-a07-08 座長 赤澤 輝彦

1D-a07 柁川(九大) 異常横磁界効果を利用した遮蔽電流の除去方法が提案された.また,この提案の妥当性を調べるために小型自作マグネットを用いて行われた評価実験の
報告があった.中心到達磁界よりも大きな振幅の交流磁界を短時間だけ印加すれば遮蔽電流除去が可能であり,この手法を用いることで磁束クリープが抑制される効果も
期待できることがわかった.大型マグネットへの応用報告を期待する.
1D-a08 岡田(物材機構) 一様な磁気力が発生できれば,地上でも宇宙と等価な微小重力環境が出来る.しかしながら,実際に使う超伝導マグネットでは,試料配置に起因
した僅かな非対称磁場が存在する.この点に注目し,タンパク質単結晶育成に大きな影響を及ぼす溶液内の対流現象を数値計算的に調べた.その結果,高磁気力により
作られる微少重力環境では,非対称磁場により溶液内の濃度や速度分布が大きく変化し,宇宙でのタンパク質の結晶育成の環境と大きく異なるとの報告があった.


磁気分離 1D-a09-10 座長 柁川 一弘

1D-a09:赤澤(神戸大)らは、ローレンツ体積力を利用した海水・油分離装置について、装置内の海水の流れをMHDモデルにより数値シミュレーションし、磁場強度や
粒子径の影響を評価した。また、製作した鉛直配置の分離装置を用いて検証実験を実施し、数値解析とほぼ一致する結果を得た。今後は、独自に提案するイオンモデル
による数値解析結果と比較・検討する予定である。
1D-a10:廣田(物材機構)らは、強磁場下に置かれた複数の弱磁性微粒子の挙動について、従来の光学的な可視化による観察に加えて、分子動力学法に基づく数値シミュ
レーション手法を構築した。多数の微粒子の相互作用による三角形配置や、1個づつ微粒子を付け加えた際の相互作用の変化を、数値解析により忠実に再現することが
できた。本研究は、今後の材料プロセスや磁気分離の効率化に有益な知見を与えることが期待される。


疲労 1D-p01 座長 仲井 浩孝

1D-p01:由利(NIMS)らは、前回のTi-6Al-4V合金に引続き、Ti-6Al-4V ELI (Extra Low Interstitials) 合金の20 Kガスヘリウム中での高サイクル疲労試験
を行い、組織が極低温高サイクル疲労特性に及ぼす影響についての検討を行った。双方の材料とも、β焼鈍材(針状組織)は(α+β)焼鈍材に比べて、
引張強度や0.2%耐力などの静的特性は低下するものの、疲労強度は高い値を示す。Ti-6Al-4V ELI合金β焼鈍材の疲労強度はこれまでに発表者らが取得した
チタン合金のデータの中で一番高い値を示したが、一方で、(α+β)焼鈍材からの静的特性の低下がTi-6Al-4V合金β焼鈍材よりも大きいことが明らかとなった。
チタン合金の選択にあたっては、静的特性と疲労特性の兼ね合いで使用目的に合った物を選ぶことが重要となる。


A15(1) 1D-p02-05 座長 小黒 英俊

本セッションでは4件の報告があった。1件はCIC導体の素線配置に関する研究であった。
1D-p02森村ら(東北大)により、ケーブルのジョイント部における接触抵抗に、ジョイントの銅スリーブに素線が触れていないものがあり、このために接触抵抗の
分布ができている事が報告された。
他の3件はNb3Alに関しての発表であった。1D-p03:飯島ら(物材機構)より、Taマトリックスを用いた急熱急冷変態法Nb3Al線材の特性に関して報告された。
1D-p04:伴野ら(物材機構)より、Nb3Al線材のピンニングセンターに関して報告があった。積層欠陥の存在をこれまで報告していたが、この欠陥が3軸方向に
分布しているため、うまくピンニングセンターとして働く事が報告された。
1D-p05吉田ら(上智大)からは、加速器用マグネット応用に向けた、Nb3Al線材の開発に関して報告があった。


11月9日(水)
P会場 ポスターセッションI 14:45-16:15

産業応用 1P-p01-03 座長 槙田 康博

1P-01 槌本(北海道工大) :バルク磁石の内部応力分布をマクスウェル応力分布から推定できないかを目標に、まず円柱と円筒状の形状モデルで、解析的な
アプローチをしている。解析の解としては妥当と思えるので、より現物のバルク材を対象にした解析やモデル数値解析で、新たな知見が得られることを希望する。
1P-02 横山(足利工大) :パルス着磁は、着磁時間が短い、簡便、安価などの利点を持つ着磁方法だが、バルク材の特性向上と大型化で、より大きな磁場捕捉が
難しくなっているという問題がある。発表では、人工的に細孔をバルクに空けたバルク材を作成し、パルス着磁特性を測定している。穴をあけた個所では、
効率的に内部に磁場が侵入していく結果が得られたが、印加磁界5Tを超える磁場からは細孔部での着磁分布の歪が大きくなり、結果として補足磁場が1.9Tから
1.2Tに低下した。この着磁特性の劣化を起こさないために孔の径を現在の2mmからより小さいものにしてトライする予定している。成果があれば、着磁工程の効率化が
図れるので、良い結果に期待したい。
1P-03 二宮(成蹊大) :2つの着磁させたバルク材で挟まれた空間に着磁用の電磁石からの磁場も重畳することで均一な磁場空間が創出できることを実証していた。
そこでは磁性体がバルク材に貼りつくことなく浮上することも示した。面白い現象で、よい応用先の提案と、装置の進化に期待する。


非接触支持 1P-p04-05 座長 伴野 信哉

本セッションには2件の発表があった。
秋田県立大の二村はバルク超伝導体上の浮上磁石の振動を抑制する方法として浮上磁石を磁性流体で包む方法を提案し減衰の促進がもたらされることを示した。
また磁性流体を凍結して流動性を低下させた場合には効果が見られず、流動性が減衰のキーになることを示した。
鉄道総研の荒井はHTS磁気軸受でフライホイールを非接触支持する模型試験装置の開発(第2報)について報告した。有限要素法によるロータダイナミクス解析を
行い、危険回転速度が1000 rpmと3000 rpmにあることを突き止め、この間で安定して回転できる見込みを得た。


計測(2) 1P-p06-09 座長 木村 誠宏

計測(2)のポスターセッションでは、4件が報告された。
1P-p06 キャパシタンス式熱膨張・磁気歪測定装置が報告された。標準試料である無酸素銅並の熱膨張が予想値より2桁大きく測定された点について今後の
物理的解釈に期待したい。
1P-p07 マンガニン線を用いた熱線式流速計の液体水素中の特性について報告された。今回の報告では液中の流速特性であり、気液2相流での特性試験と応用に
期待したい。
1P-p08  光ファイバを使った温度測定について報告された。注目されるのはファイバの長さ方向に沿った5 cm程度の位置精度で温度分布測定が可能とされた事である。
測定した温度定点が2点であったため、小型冷凍機等を使った他の温度での特性等の報告に期待したい。
1P-p09 光ファイバ温度センサの機械加振試験の報告である。前ポスター報告と併せて超伝導磁石の温度分布測定への応用が期待される。


NMR(1) 1P-p10-11 座長 津田 理

1P-p10(木本ら):小型NMR用GdBCOバルク体の着磁特性に関する報告で種結晶からの距離によって臨界電流密度が異なることを、着磁されたバルク体の磁場分布
測定により明確にしたとのことが示された。
1P-p11(蛭川ら):NMRへの応用を視野に入れた大型リング状バルク体の着磁磁場分布測定結果に関する報告で、2つのバルク体をスペーサを介して鉛直方向に
配置し、スペーサーの厚さを調整した場合の磁場均一度を評価したとのことであった。


核融合 1P-p12-13 座長 津田 理

1P-p12(寺﨑ら):ヘリカル核融合炉用10 kA級YBCO導体間の接続抵抗に関する報告で、7層2列のYBCOテープ導体間の接続部において、各テープ線を階段状に配置し
ラップジョイントする際の接触抵抗は、半田接続時が機械接続時の約1/45で、半田接続によるラップジョイントがヘリカル核融合炉用HTSマグネットに有効とのことで
あった。
1P-p13(濱口ら):LHDヘリカルコイル用低温排気圧縮機システムの動的挙動に関する報告で、ヘリカルコイルを11 kA通電時より急速減磁(時定数30秒)
した際にも、飽和ヘリウム槽ヒーターによる低温排気圧縮機の流量制御によって低温排気圧縮機システムが安定に動作したとのこと。また、過去5年間の低温排気圧縮機
システムの継続安定運転実績が報告されていた。


コイルクエンチ検出 1P-p14-16 座長 津田 理

1P-p14(大西ら):SMES用YBCO超電導コイルのクエンチ検出に関する報告で、4本のYBCOテープ線で構成される積層導体を用いたパンケーキコイルにおいてテープ線の
Ic以上の電流を通電することにより、テープ線間の転流現象をホール素子で観測することに成功したとのことであった。
1P-p15(和久田ら):高温超電導磁石の新クエンチプロテクション方法の提案に関する発表で、高温超電導磁石でクエンチを検出した際に、コイルの臨界電流を超える
電流を外部より瞬間的に投入して、コイル全体を抵抗状態にする過電流式クエンチバック方式と、その際の高速大電流投入を可能とする新しいコイル巻線方法(IPW法)が
紹介され、その動作試験結果が報告されていた。
1P-p16(大保ら):GdBCO小型パンケーキコイル内の電圧分布特性に関する報告液体窒素冷却した28ターンのレーストラック型の含浸パンケーキコイル内の電圧分布を
測定したところ、コイル内電圧が内層にいくにつれ増加する特性が実験と解析で一致したとのことであった。


Nb系線材 1P-p17-20 座長 伴野 信哉

本セッションにはNb3Al、V3Ga、Nb3Sn、Nb-Tiに関する4件の発表があった。
KEKの金氏はTaおよびNbマトリクスで構成される変態法Nb3Al線材のJcの引張り歪み依存性を比較し残留歪みの違いによる特性の違いについて論じている。
富山大の村上氏は高Ga濃度Ti-Ga化合物とV母材との拡散反応によるV3Ga生成過程についてTEM観察結果をもとに明確化した。
東北大の小黒氏は50 T級ハイブリッドマグネットの実現に向けてCuNb強化Nb3SnラザフォードケーブルのIc及び機械特性について報告した。ステンレステープ
の補強も併用して、素線の劣化なく1500 Aの通電に成功した。
足利工大の齋藤氏はNb-Ti等の合金線材を溶融過程を含まないで実現する線材作製法について報告した。クラッドチップ押出(CCE)法と呼ばれる方法である。
この方法を用いてV-TiやNb-Zrなどの難加工性材料にも挑戦し、焼鈍による回復処理を合わせて線材化に成功している。

Y系線材 1P-p21-26 座長 八木 正史

1P-p23:梶原(九大)らは、RE系超電導線材の特性を低下させる要因をレーザ走査熱電顕微鏡および電子顕微鏡を併用する事で、微細構造を可視化でき、Hastelloyの
平滑性が性能に大きく依存する事を見いだした。1P-p26:木村(昭和)らは、TFA-MOD法によるRe系超電導線材において、人工ピンの原料となるZrを20 mmol/L投入し、
3 Tの垂直磁場で30 A/cm-wIc値を確認したが、印加磁界の角度依存性が見られており、さらなる最適化が必要である。一方、1P-p21:李(前川)らは、市販の人工
ピン入りRe系超電導線材のJc均一性を評価したところ、ロッド毎で20%弱の差が観測されており、超電導コイルの設計時に留意する必要があるとの報告があった。


HTSコイル 1P-p27-33 座長 宮崎 寛史

1P-p27:中川(日立) Bi系コイルのVI特性を定量的に計算できる手法について報告があった。線材の温度、磁場、角度依存性を定式化し、任意の温度での
コイルIcについて実験値と計算値が定量的に一致することを示した。
1P-p28:中西(東大) Y系コイルの巻線機の開発と試巻の結果について報告があった。まだ、2ターン程度であるが、コイルが巻線できたということである。
テンションコントロールなど、まだ開発途中の部分もあるが、改善していくということである。
1P-p29:澤田(九大) 並列導体の電流分流について、パンケーキコイルで転位方向の全パターンを計算し、最も偏流が少なくなる巻線方法について報告が
あった。巻線パターンと偏流の関連性について考察を進めてもらいたい。
1P-p30:熊野(九大) 巻乱れによる付加的交流損失について報告があった。巻乱れが生じた場合に補正する方法としては、なるべく少ないターンで補正した
ほうが付加的交流損失を抑制できるということであった。
1P-p31:古瀬(産総研) 任意の角度に1Tの磁場を発生させるベクトルマグネットについて報告があった。傘型形状のコイルを4つ配置し、2軸のマグネットの
電流を調整することにより任意の角度に磁場を発生させることができるということである。今回は1ユニットのみの発表であったが、今後4ユニットを組み合わ
せて試験を実施するということである。
1P-p32:宮副(東大) バックグラウンド磁場中でのY系コイルの遮蔽磁場について報告があった。遮蔽磁場を考慮して計算することでバックアップ磁場中での
磁場分布を模擬できるということである。
1P-p33:川鍋(九大) Y系線材のロスの新現象に関して報告があった。ΔΦが異なる2種類の線材でこの現象を比較するとΔΦが小さい、すなわちJcが高い線材の
ほうがロスが小さくなるということであった。コイル化した場合にどの程度効果があるのかについても検討を進めるということである。




11月10日(木)
A会場 9:30-17:50

Bi2223コイル 2A-a01-03 座長 藤吉 孝則

本セッションでは,3件の報告があった.
2A-a01:蔵脇(九大)らは,DI-BSCCOを使用したダブルパンケーキコイルを8個重ねた5T級コイルを作製して交流通電損失を測定した.また,コイル巻線の短尺試料を
積層した試料の垂直磁界損失を測定して,積層枚数の増加により垂直磁界損失が減少することを示した.これらの特性を用いて,コイルの外部磁界損失を求め実測値と
比較検討した.
2A-a02:李(京大)らは,Bi2223テープ線材においてツイストなしの線材とツイスト有りの線材を用いたコイルを作製して,それらのヒステリシスループを測定している.
ツイスト有りの線材を用いたコイルのヒステリシスループが小さくなっており,ツイスト有りの線材を使うことにより.遮蔽電流による磁界が速やかに減衰することを
報告した.
2A-a03:寺尾(神戸製鋼)らは,Bi2223テープ線材を用いて,20Kで運転を目指した3 T MRIマグネットの要素試験を行い,実機マネットの設計・製作を行っている.初期
冷却試験や磁場測定の結果設計通りに作製されていることを報告した.


Y系線材特性 2A-a04-05 座長 松本 要

Y系線材特性セッションでは2件の報告があった。
最初に九工大の永水より、BHO(BaHfO3)ピンをドープしたPLD法GdBCO線材のJc-B特性に関する報告があった。ピンなし、BZOピン導入、およびBHOピン導入の三者に
ついて20 Kと77 Kの磁場中特性を評価したところ、いずれの条件でもBHOピンが優れた特性を示した。これよりGdBCO線材にはBHOピンが有効であると結論付けられた。
続いて、ISTECの筑本より、PLD法RE123テープ線材の磁化緩和特性の磁場角度依存性に関する報告があった。これまで、同テープではB//ab付近において、Jcの非対称ピークや
磁気ヒステリシスの消失などの異常が報告されている。そこで、同条件下(65 K、磁場中など)においてSQUIDによる磁化ヒステリシス測定を行ったところ、15度、30度で
磁化の消失などの異常が現れ、さらに15度での磁化緩和測定では急速な緩和が確認された。磁場印加角度に依存して磁化緩和の大きな変化が現れたことから、今後、この
観点からの研究の進展が期待されよう。


11月10日(木)
B会場 9:30-10:45

SMES/クエンチ保護 2B-a01-05 座長 今川 信作

「2B-a01:後村(東北大)」では,液体水素を冷媒とする間接冷却方式100 MJ-SMESトロイダルコイルの概念設計について報告があった。素線絶縁を施したケーブル・イン・
コンジット導体をアルミニウム板に接触させて冷却する構造を提案しており,安定性マージンが1 J/cc以上,クエンチ保護時の到達温度が130 K以下を条件としてHyper Tech社の
多芯MgB2線を20 K, 2 Tで使用する場合,外径が11.9 m,高さが4.6 mの大型コイルとなること,および,5 Tで同じ臨界電流の線材が開発されると外径を6.4 mに小型化できる
ことが報告された。
「2B-a02:柳澤(千葉大)」では,へき開力によるYBCOコイルの特性劣化を抑制するため導体表面にポリイミド電着を施したコイルにエポキシ真空含浸を施した実験結果が報告
された。ポリマー架橋率の低いポリイミドを用いることにより,エポキシと線材の間に伝わる力が緩和されて,エポキシ含浸・硬化による特性劣化が生じないことが示された。
「2B-a03:竹松(上智大)」では,内径30 mm,5ターンのYBCOシングルパンケーキコイルを77 Kで繰り返しクエンチさせた実験結果と解析結果について報告があった。検出電圧が
2.5 V未満(クエンチ箇所近傍の到達温度が340 K未満)では,V-I特性は線形で劣化は生じないが,それ以上では線材が局所的に溶融して,クエンチ電流の低下と到達温度の
上昇が観測された。340 Kを許容温度と見なして,4.2 K,10 Tでのクエンチ解析を行った結果,クエンチ後0.13 sで許容温度に到達することが報告された。
「2B-a04:水野(鉄道総研)」では,シアノアクリレートを用いたYBCOコイル含浸の実験結果について報告があった。真空含浸に適しており,接着強度が線材の剥離強度よりも
小さいものとしてシアノアクリレート(セメダイン:3000RX)が選定され,期待通りに真空含浸によって臨界電流やn値が劣化しないことが実証された。
「2B-a05:石山(早稲田大)」では,SMES用YBCOコイルのクエンチ検出と保護に関する数値解析について報告があった。素線絶縁を施した4枚の線材を積層した導体の線材間の
転流監視によるクエンチ検出が従来の電圧監視よりも有用であることを数値解析によって示した。


11月10日(木)
C会場 9:30-11:00

MgB2(1) 2C-a01-06 座長 内藤 智之

2C-a01:西島(NIMS) 内部拡散法で作製したMgB2線材が中空構造を持ちながらPIT法線材より高い機械特性を有することを報告した。
2C-a02:金田(東海大) MgB2線材にHIP処理及びその前後に常圧熱処理を施すとHIP処理のみに比べて高磁場中のJcが向上することを示した。
2C-a03:中山(日大) 冷間圧力印加によって高密度化したMgB2線材のJeが印加圧力の増加とともに増大する傾向にあることを示した。
2C-a04:児玉(日立) Premix-PIT法で作製したMgB2線材のMgB2密度が従来考えられていたほど高くないことを高倍率のSEM観察から明らかにし、微細組織の最適化に
よる高Jc化が期待されることを報告した。
2C-a05:北村(鹿児島大) MgB2テープ線材5本で構成された転位導体と短尺試料の臨界電流密度の比較から導体化によって超伝導特性が劣化しないことを示した。
2C-a06:常松(京大) Al合金基板上に作製したMgB2薄膜の超伝導特性が基板の平滑性に依存せず、むしろチャンバー内残留ガスの影響を受ける可能性を報告した。


11月10日(木)
D会場 9:30-11:00

冷却システム 2D-a01-06 座長 増山 新二

本セッションでは,冷却システムについて6件の発表があった。
2D-a01:大沢(東工大)ら 熱起電力を利用して高温超電導マグネットを励磁する方法を宇宙空間に適応することの報告がされた。種々の数値解析からシステムに
最適なパラメータを検討している。
2D-a02:山口(中部大)ら 常電導電流リードの熱損失低減のために,多段化とガス冷却を組み合わせることによる数値解析結果が報告された。冷凍機のCOPが
熱損失低減のための重要なパラメータとなっている。
2D-a03:高田(筑波大)ら POLARBEAR II 望遠鏡に搭載するためのパルス管冷凍機の角度依存性が実験的に調査された。製造メーカならびに4.2Kでの冷凍能力が
異なる2台のパルス管冷凍機において,同様な角度依存性を示すという興味ある結果が報告された。
2D-a04:武田(東大)ら 開発したヘリウム循環装置を市販のMEG装置へ搭載するために,種々の改造を行い,現在,問題なく動作可能であることが報告された。
2D-a05:杉本(東工大)ら 窒素を冷媒としたサーモサイフォン式ヒートパイプの熱輸送限界に関する報告がされた。窒素コンテナの温度をモニタすることで
ヒートパイプの限界熱輸送量を見積もっている。
2D-a06:尾崎(大陽日酸)ら 開発したネオン冷凍機の性能試験結果が報告された。大型超電導機器への冷却に期待される。今後は,HTS変圧器への適応を目指して
いるとのことである。


11月10日(木)
P会場 ポスターセッションII 13:00-14:30

送電ケーブル(2) 2P-p01-05 座長 古瀬 充穂

2P-p01王(早大): Y系超電導ケーブルに過電流が流れた時のケーブル内部の温度上昇を、電流分布・熱伝導連成の数値解析で求めた結果が報告された。
2P-p02王(早大):同じく過電流が流れた時のケーブル接続部の様子について数値解析結果が報告された。導体接合部で発熱集中があり特性劣化の可能性が
指摘されたが、電流の乗り移りをコントロールして回避するアイデアについてもディスカッションされていた。
2P-p03藤(古河電工):275 kVケーブル用の絶縁材料の部分放電試験等による評価結果の報告であった。高電圧化に向けて貴重なデータである。
2P-p05呂(東大):鉄道の直流き電システムに超電導ケーブルを適用した場合の効果の検討について報告された。具体的な適用箇所が想定しやすいと思われる
ので、今後の詳細な検討に期待したい。


電気機器(2) 2P-p06-09 座長 和泉 充

「2P-P06:富岡(富士電機)」厚さ50 μmの銅線を付加したY系線材を用いて限流機能を付加したモデル変圧器を製作して短絡特性試験を行ったもので、線材
巻き線の試験前後の特性の劣化なしに、一次側の短絡電流は559 Aから174 aに限流し、目標である定格電流の3倍以下であることを確認した。
「2P-P07:土井(岡山大)」(コメントなし、なぜ中型超電導モータのニーズが成立するのか理解できなかった)
「2P-P08:寺尾(東大)」MgB2を集中巻き線にして電機子巻き線とし、界磁巻き線にHTS線材を適用するモデルを構築して電磁解析により10 MWクラスの
風力発電機を設計した。界磁のHTS所要線材長を変えて、電機子コイルにかかる最大経験磁場を変化させた3種類の同期機を設計して電機子の交流損失等を
予測した。超電導発電機の設計は、電気、機械、熱の3設計によって成り立っており、今後の進展が期待される。
「2P-P09:QUEVAL(東大)」風力用同期発電機のAC/DC/AC変換を通じた系統連結をターゲットとした研究であり、空芯の界磁レーストラックコイルと磁性を含まない
電機子分布巻き線をもつ超電導発電機等への定常および過渡解析を行うモデルを提唱した。


HTSバルク 2P-p10-14 座長 横山 和哉

2P-p10:小山(岩手大)らはバルク体のGSRの端部のみJcを下げる新たなシミュレーション手法を考案し,実験結果とよく一致することを示した。
2P-p11:岩﨑(芝浦工大)らはY211にBaSnO3を添加して焼結することで,新しい組織Y2411を生成する手法を提案し,FC(77 K,0.5 T)の結果,従来の2倍の
捕捉磁場を達成した。
2P-p12:土屋(芝浦工大)らはバルク体の作製過程で磁性体を入れてピン止め力を向上させる手法を試みた。今回は結晶成長しにくい結果となっているが,
今後温度プログラムを検討とのこと。
2P-p13:池田(芝浦工大)らは大型試料を作るためにバインダー添加の最適化を試みた。アクリルバインダーを添加した結果,クラックが入り難くなったとのこと。
2P-p14:TIG法は気孔の生成の抑制,211の肥大化の抑制が可能であるが,馬越(芝浦工大)らはこれにバインダーを添加することにより前駆体を強くする
ことに成功した。


MgB2(2) 2P-p15-18 座長 春田 正和

2P-p15:藤井(NIMS)らは、市販のMgB2粉末を鉱油に浸してボールミルを行い、Fe管に充填することによりMgB2線材を作製した。この線材のJc(4.2 K, 10 T)は、
市販粉末を用いた線材に比べ10倍ほど大きくなった。さらに、Mg粉を添加してボールミルすることにより、Jcがさらに向上し9 kA/cm2となった。Jcの向上は残留した
油分による炭素置換のためと考えられる。
2P-p16:田中(日立・日立研)らは、in-situ法を用いて、Mg、B、およびB4Cの初期配合組成を変化させ、630℃という低温でMgB2線材の作製を行った。化学量論比に
対して、BとCの合計モル比を60%過剰にした場合、B4C無添加のMg+2Bの場合と比較して、Jcは4倍に向上した(Jc=385 A/mm2 @4.2 K, 7 T)。630℃の低温でもB過剰組成
にすることによりB4Cを用いてC置換が可能であることを示した。
2P-p17:葉(九大、NIMS)らは、内部拡散法によるMgB2多芯線の作製を報告した。外部シースがCu、内部シースがFeの19芯(Cu-Fe 19)線材、および内部シースがTaの
37芯(Cu-Ta 37)線材を作製した。Feシースは加工性が悪く、多芯化は19芯程度が限界であった。10 mol%ナノSiCを添加したCu-Fe 19線材およびCu-Ta 37線材の4.2 K、
10 TでのJcは、それぞれ27 kA/cm2および60 kA/cm2であった。
2P-p18:富田(鉄道総研)らは、直径30 mm、厚さ10 mmのMgB2バルク体を作製した。ほぼ同心円状の捕捉磁場分布が確認され、捕捉磁場は15 Kにおいて2.25 Tであった。
さらに、バルク体2個を対向させたバルクペアを着磁したところ、捕捉磁場は17.5 Kにおいて3.1 Tであり、MgB2バルクが数テスラ級の強力磁石として有望であることを示した。

HTS電磁特性 2P-p19-23 座長 山崎 裕文

10日午後のポスターセッション「HTS電磁特性」では5件の発表があった。
「2P-p20:矢崎(早大)」市販の YBCO テープ、Bi-2223 テープの空気中での高温加熱による劣化について調べている。200℃以下では臨界電流の低下は観測
されないため、通常のハンダ付けでの劣化は心配なさそうである。
「2P-p21:坂井(ISTEC-SRL)」多数の RE-123 系テープの剥離問題について調べ、剥離が切断加工時に生じた欠陥や線材に内包された欠陥に起因することを
明らかにした。剥離を引き起こさないようなレーザー切断方法についても検討している。
「2P-p23:小原(中部大)」市販の Bi-2223 テープを3~4枚積層して逆向きの電流を流すことで、その臨界電流がテープ単独の場合と比較して最大 50% 増大
することを見いだした。垂直方向の磁界が減少するためであるが、定量的な検討や応用可能性の提示が重要である。


加速器(2) 2P-p24-28 座長 小柳 圭

本セッションでは、中性子照射試験や高温超電導線材の加速器応用に関する発表が5件あった。
2P-p24:吉田(KEK)らは、超伝導磁石材料の低温環境下での中性子照射による劣化の調査結果を報告した。LHC加速器アップグレード計画やミューオン電子転換
仮定探索実験COMETにおける1021~1022 n/m2 の非常に高い放射線環境を想定している。今回の発表では、アルミ安定化超伝導線に安定化材として用いられる
アルミ合金に原子炉からの中性子を低温環境下で照射し、電気伝導度の劣化をその場測定した結果を報告した。5N純アルミにMg(40 ppm)とCu(20 ppm)を添加して
高強度化したアルミ材を用いた超伝導線の試作品からアルミ試料を切り出し、温度約12Kで中性子照射による抵抗増加をその場測定した結果、1020 n/m2当り1.2 μΩの
抵抗増加を観測した。室温まで昇温することにより劣化は回復するため、多くとも年に数回程度の昇温が、中性子によるアルミ安定化材の劣化回避に有効である。
今後、伝熱板やCu安定化材のほか、CERNOX温度計の性能に中性子照射が与える影響についても調べる予定とのことであった。
2P-p25:琴寄(早大)らは、加速器運用中に高温超電導体が放射線環境中で使用される事を想定して、超電導線材への中性子線照射実験を行った結果を報告した。
これまでに放医研大型サイクロトロン(AVF-930)を用いて水冷ベリリウムターゲット上に30 MeV重水素を20 μAを照射することにより発生した中性子線(77 kGy×3回)
をBi-2223線材とY系線材照射して臨界電流特性に影響がないことを確認しているが、今回はさらに多量の中性子線照射(77 kGy×7回)による高温超電導線材の臨界電流
特性への影響を調べた。中性子線照射前のI-V曲線と中性子線539 kGy照射後のI-V曲線を比較した結果、中性子線照射後も目立ったIcの低下は見られなかった。
2P-p26:柄澤(早大)らは、YBCO超電導コイルを用いたサイクロトロンの概念設計に関し、基本設計したサイクロトロン用コイルの電磁応力計算の結果を報告した。
超電導コイルシステムは、等時性磁場発生用の円形スプリットコイルとAVF発生用のスパイラルセクターコイルからなり、等時性磁場とAVFが重畳された複雑な磁場を
形成するため、コイルシステムの各要素はフープ応力に限らず複雑な応力を経験する。伝導冷却での運転温度を20 K、負荷率0.7、コイルに加わる引張り応力最大
600 MPaなどの条件化で解析した結果、メインコイルは線材自身の強度で電磁応力に耐えられる一方、スパイラルセクターコイルについてはフープ応力が1.12G Paに
なるが、補強を施すことで13.8MPaに低減できるとのことであった。
2P-p27:植田(阪大)らは、高温超電導技術を活用した小型・高効率・高性能の次世代超電導サイクロトロンの開発に関し、新たに開発した数値解析手法を用いて、
Y系超電導線材に流れる誘導電流による磁界の空間的かつ時間的変化の計算について報告した。放医研HIMACと同等の出力(400 MeV/核子,300 nA)を想定して
使用線材の最小化を図って設計した次世代超電導サイクロトロン用コイルシステムのメインコイル(内径0.5 m,外径0.6 m,高さ0.05 m,巻数200,通電電流300 A)
について計算した結果、励磁直後の中心磁場は所望の磁場の約98%であり、約5hでほぼずれなくなる結果が得られた。
2P-p28:高橋(京大)らは、磁場が時間的に一定である直流マグネットで構成でき且つ強集束性であるFFAG加速器を対象とした、薄膜線材によるマグネットの設計結果を
報告した。磁場設計したのはFDF triplet型ラディアルセクタ型FFAG加速器用マグネットであり、k値は4, セル数は8,ビーム軌道半径は3.63 mから5.09 mである。導体
配置を精密に設計することによって加速器マグネットに要求される精密な磁場を発生する「コイル支配型マグネット」の設計において、線材幅5 mm,厚さ0.2 mmの薄膜線材
を使用し、線材断面の電流密度を500 A/mm2として、0.3%以下のedge-wise曲げ歪,20 mm以上のflat-wise曲げ半径を許容すると仮定している。今回の設計では、導体配置を
最適化することにより、加速器中心を中心とする円に沿って磁場を積分した積分磁場が加速器設計の要求を満たすマグネット設計を得ることができた。今後、使用線材量
と磁場強度を低減できるスパイラルセクタ型FFAG加速器用マグネットの設計も検討しているとのことであった。


冷却・冷凍 2P-p29-35 座長 達本 衡輝

2P-p31:岡田(KEK)では、高エネルギー宇宙物理学実験の検出素子冷却用ソープション冷凍機の開発を進めており、その性能を左右する活性炭吸着器への
ヘリウムガスの吸着量を4.2 K、77 K、300 Kの広範囲の温度で評価した。77 Kと300 Kの吸着等温線は吸着平衡圧力に比例するが、4.2Kの場合はこれらとは
異なり、細孔内への吸着現象が支配的となるために、吸着平衡圧力が1 Pa以上でその吸着量はほぼ飽和するが、その吸着量は77 Kの場合の約4桁以上である
との報告があった。
2P-p34:岡本(東大)からは、これまで開発を進めてきたMEG(脳磁場)計測用ヘリウム循環装置の商用化に向けて開発した自動制御システムに関する報告があった。
2P-p35:夏目(総研大)は、自励振動式ヒートパイプによる超伝導マグネット冷却方式を提案しており、ネオン、水素、窒素を冷媒として実験を行った結果が
報告された。ボイド率やパイプ内の温度分布依存性等を明らかにすることが今後の課題のようである。


11月11日(金)
A会場 9:30-15:00

HTS測定 3A-a01-06 座長 植田 浩史

3A-a01 東川(九大):長尺RE123線材の面内臨界電流密度分布を非破壊で評価できるリール式磁気顕微鏡システムを開発した。この装置はすでに開発した
ホール素子の高速走査機構(36m/h)をリール式の線材搬送機構に搭載したものである。これにより、臨界電流密度の2次元分布を得ることが可能で、線材の
品質管理に資する情報を連続的かつ長尺に亘って評価可能なシステムが構築されたことになる。マルチフィラメントに関しても同様の情報が得られる。長尺
RE123線材の開発技術が確立され、応用に向けて実際に商用線材が供給され始める中、品質管理や保証で非常に有用な装置の開発と言える。
3A-a02 塩原(九大):これまで彼らが開発してきた走査型ホール素子顕微鏡について、磁気工学イメージング(MOI)、固定式多チャンネルホール素子法
(TAPESTAR)、4端子法と比較検討し、評価手法の特長を整理した。
3A-a03 作田(鹿児島大):ポインチングベクトル法によるHTS線材の交流損失測定を行った。これまで、線材周囲でピックアップコイルとポテンシャルリードを
回転させ測定していたが、今回はピックアップコイルとポテンシャルリードを線材周囲に多数固定配置する改良型を提案した。Bi2223線材を対象に実験を行い、
線材断面に沿ったエネルギーフローの分布を得た。エネルギーフロー分布から線材内ロス分布との関係について質問があったが、現状では対応づけられるまでに
至っておらず、今後検討するとのことである。
3A-a04 向井(鹿児島大):HTSソレノイドコイルの交流損失をポインチングベクトル法で測定した。測定装置は、上述の3A-a03で報告された方法と同様で、
ピックアップコイルとポテンシャルリードをコイル内外に多数固定配置している。同時掃引時の交流損失について、外部磁界と自己磁界の向きによって特性が
異なることを示し、無限円筒モデルを利用して説明した。
3A-a05 本村(鹿児島大):液体窒素蒸発法によってHTSコイルの交流損失を測定した。Bi2223線材を2枚積層したものを11層、33ターンのソレノイドコイルを2つ
重ね、コイル間接続部で転位を施したコイルと、転位を施していないコイルの2通りを用意した。外部磁界印加用マグネットを用いて試料コイルに磁界を角度を
変えて印加した。転位を施したコイルの交流損失は減少しており、転位の効果が明らかになった。
3A-a06 沖田(熊本大):第三高調波電圧誘導法によってSTOバイクリスタル基板の傾斜角依存性をV-I0特性(第三高調波電圧‐コイル電流特性)を測定すること
で考察した。低傾斜角の基板ではI0の増加とともにVは2段階で立ち上がり、高傾斜角の基板ではV3は単調に増加した、粒間に流れる遮へい電流によってこの現象の
違いを説明した。実験結果の解釈について議論があった。2段階でV3の立ち上がりが起きる場合、周波数の増加と電圧上昇の順番が逆転しており、もう少し複雑な
現象が関係しているのではないかと指摘があった。


MOD法Y系線材 3A-a07-11 座長 飯島 康裕

本セッションでは最近のMOD法Y系線材の技術進捗が報告された。
先ずSRL-ISTECの高木ら(3A-a07)は、reel-to-reel方式で逐次結晶化熱処理を行う際の本焼成処理条件の改善に取り組み、従来比9倍程度の線速(15 m/h)にて
200 m長の高特性線材の作製を報告した。バッチ式熱処理に比べ線長の制約が少ない上、長手方向・幅方向の均一性についても極めて良好とのことで、今後の進展が
期待される。また同じくSRLの高橋(3A-a08)、および成蹊大の三浦(3A-a09)、九州大の寺西(3A-a010)らからは、MOD法の課題とされる磁界中特性向上のための
ピンニングセンター導入検討の報告がなされた。高橋らは本焼成の前に中間熱処理を導入することによって気相法線材に迫る高い磁界中Jc特性が得られたことを報告
した。また三浦らは人工的に導入されるナノ粒子(BaMO3(M=Zr, etc.))の粒径や密度を、超電導マトリックス層の結晶性を低下させずに系統的に振ることに成功し、ナノ粒子
密度の上昇に伴って液体窒素温度領域のJc特性が向上していくことを確認した。最後に東大の石渡らより、フッ酸-水蒸気反応を使わない環境負荷の少ないMOD法に
おいて、短時間の高速熱処理で高いJcが得られることが報告された。基板温度についても800℃弱に低減しており、今後金属基板上での確認が期待される。


PLD法Y系線材 3A-p01-06 座長 山田 穣

3A-p01 春田 正和(高知工科大)は、PLD法による人工ピンナノロッドの不可逆磁場特性を詳しく調べた。その結果、線材製造に有利な、あまり製造条件に依存しない
超電導材料とピン材料の組み合わせを検討した。
3A-p02 一野 祐亮(名大)は、コンビナトリアル-PLD(C-PLD)法により見出したピン材料、BaTbO3(BTO)とBa3In3Cu4O12(334)に注目し、応用上重要な低温での特性を調べた。
その結果、低温になるほどJc-Bは向上し、40 Kのピン止め力Fpは、BTO、334試料ともに非常に大きい値を示し、今後有望と思われた。
3A-p03 鶴田彰宏(名大)は、ターゲット交換法試料により得られる強いピンニング力を有するBaMO3(M = Zr, Sn)ナノロッド導入の効果について調べた。BSOを添加した
Sm1.04Ba1.96Cu3Oy薄膜にで特性が向上し、1.8 Tの磁場下ではJcが1.36 MA/cm2Fpにして24.5 GN/m3と非常に強いピンニング力を示した。従来のFpの最大値14.8 GN/m3
に比べ大きく向上している。
3A-p04 飛田浩史(ISTEC-SRL)は、人工ピンの一つとして、今回、BaHfO3(=BHO)の導入することにより、BZO導入線材を上回る世界最高レベルの磁場中Ic特性向上を
実現している。BHOは77 Kで最高84.8 A/cm-w@3 Tを示し、64 Kでは200 A/cm以上の高い値を記録した。BHOは、c軸方向にほぼ揃ったナノロッドピンで、そのロッド径、長さは、
BHO < BZO < BSOの傾向であった。Ic-B-θ角度依存性が小さく、応用に有利である。
3A-p05 鈴木龍次(フジクラ)らは、Ic×Lの値で572 A×816.4 m=466,981 Amの記録を達成しているが、応用へ向けた信頼性評価として剥離試験を実施した。剥離応力は41~76 MPa
で、全数で比較的高い剥離強度の結果が得られた。多くは、テスト限界を超えており、さらに高い剥離限界の可能性がある。線材各層の剥離状況や、PLD工程の熱履歴で剥離
応力が向上していることを確認した。今後の薄膜線材の応用へのカギは、応力歪剥離特性にあると思われる。
3A-p06 町 敬人(超電導工学研究所)は、交流電力機器に応用するために,マルチフィラメント化により交流損失を低減しようとしている。これまでレーザースクライビング法
により,フィラメント間抵抗を確保しつつ,溝幅100-250 μm,エッチング時間約1/10,加工によるIcの低下率は10-25%という技術を開発している。今回、さらに装置を改良し、
線材搬送速度180 m/hの高速化を達成した.今後の細線化応用が期待される。


11月11日(金)
B会場 9:30-15:00

SMES 3B-a01-03 座長 野村 新一

SMESのセッションでは3件の発表があった。3件とも濱島高太郎教授(東北大)が研究代表を務めるJST先端的低炭素化技術開発(ALCA)「自然エネルギー有効利用の
ための先進超伝導電力変換システム」に関連した研究成果報告であった。なお、講演者からの事前の申し出により、3B-a03,3B-a01,3B-a02の順で発表を行った。
3B-a03:天田(東北大)では、SMES、燃料電池、電気分解装置、液体水素ステーション、自然エネルギー源で構成される先進超電導電力変換システムの概要が紹介され、
風力発電出力の未来予測と変動補償時に必要なSMES容量に関する検討結果が報告された。その結果、10秒先の未来予測を行った場合、5 MW風力発電の平滑化用途
として50 MJの貯蔵容量が必要であることが示された。
3B-a01:新冨(日大)では、液体水素冷却によるMgB2線材を用いた50 MJのSMES用コイルの設計に関して報告された。設計方針は、10 MJの基本コイルを組み合わせた
4ポール構造としている。
3B-a02:槙田(高エネ機構)では、SMESの冷却システムに関する検討結果が報告され、特に液体水素によるサーモサイフォン冷却の可能性検討に関して報告された。


NMR(2) 3B-a04-06 座長 横山 彰一

本セッションでは、高温超電導材料を用いたNMRマグネット開発に関する発表が3件あった。
3Ba04:仲村(理研)からはφ60 mmEr系バルク材を6個積層し数mmの空間にイメージング可能な均一磁界と過冷却による磁束クリープ対策で高安定磁界
(1 Hz/hr以上)を実現し、マウス胎児の高分解能イメージングに成功した。
3B05、06(連番):松本(物材機構)からはREBCO薄膜導体を用いたNMR用コイルの試作について発表。ID79 mmφ、OD82~85 mmφのコイルを4条件で試作した。
接続ヶ所を低減するためにレイヤー巻きとしコイル高さ100 mm程度とした。含浸はワックスを用い、1つのコイルは定格達成。本結果を本に内挿コイルを試作し
17.2 T磁場中で24.0 Tを発生。そのときの最大周応力は408 MPaと見積もられた。


Y系コイル開発 3B-a07-11 座長 淡路 智

本セッションでは,Y系テープ線材を用いたコイルに関して,東芝より5件が報告された。大きく分けて,4 mm幅テープを用いて作製したシングルパンケーキコイルを
12積層したコイルに関して2件,12 mm幅の幅広テープを用いたコイルに関して1件,大型パンケーキコイルに関して2件となっている。発表は,宮崎氏と岩井氏の2名が
交代で行った。12積層コイルでは,応力集中を避けるため,パンケーキコイル内側に口出し電極を設け,これを巻き枠に固定する手法を採用した。コイルサイズは内径
50 mm,外径約90 mmで,用いた線材はSP社の4 mm幅YBCOテープ線材である。GM冷凍機による伝導冷却によって10 Kから60 Kまでの温度領域において,短尺のIc近傍まで
の安定な通電特性が得られた。電圧は主に最上部と最下部の2つのコイルから発生したとのことである。次の報告では,このコイルを液体ヘリウムで浸漬冷却し,4 Tの
バックアップ磁場中で最大4 Tの磁場発生(中心磁場は合わせて8 T)に,電圧の発生なしで成功した。コイルの周方向には,バックアップ磁場無しで最大約-2.5 MPa
(圧縮),4 T中では最大約+2.5 MPa(引っ張り)の応力が印加されていると計算されるが,その影響でもコイルの劣化がないことが示された。次に,幅の広いテープ線と
して,SP社の12 mm幅YBCOテープ線材を用いたパンケーキコイルについて報告した。幅の広いテープを用いることで,マグネットを構成するパンケーキコイルの数を
減らすことを期待した研究である。コイルの内外系は,12積層コイルとほぼ同じである。液体窒素試験では,0.1 μV/cmまでの通電で,コイルIc ≈ 122 A,n ≈ 25の
良好な結果がえられ,含浸による劣化も見られなかった。幅広テープを用いると,幅方向の電流分布が生じるが,分布を考慮した計算による電流−電圧特性と比較した
結果,ほぼ実験結果と良く一致した。また,伝導冷却により20 - 60 Kの温度で最大310 Aまで通電したが,電圧の発生がなかった。60 Kにおいて,発生磁場を計算値と
比較した結果,最大で2%のずれがあることが分かった。テープ幅を広くしていくとコイル作製は容易となるが,電流分布が大きくなり,本来超伝導マグネットで均等な
空間電流密度で運転できるメリットがなくなるのではとの指摘があった。次に内径600 mm x外径737 mmの大型パンケーキコイルについて報告された。超伝導線材節約の
ために,コイルは200 mのYBCOテープ1枚とSUS線3枚を共巻きして作製した。熱応力解析によると,このコイルが室温から液体窒素温度まで冷却されると,最大で約14 MPa
の径方向応力がかかるが,液体窒素による試験の結果,コイルIc ≈ 54 A, n ≈ 28と良好な結果が得られた。各コイルの発生電圧を測定した結果,最内層で最初に
電圧発生が起こることが分かった。用いた線材は,人工ピン入りYBCOテープのため,低磁場におけるIcの磁場印加角度依存性がほとんど無い。このため,最も磁場の
高い最内層から電圧が発生したと考えられる。さらに幅170 mmのアルミ冷却板を部分的に接続して,伝導冷却を行った結果,60 Kで最大139 Aまでの通電でも1 Kの温度差
に留まることが分かった。今後伝導冷却試験によって詳細なデータをとる予定とのことである。
現在のところ,REBCOテープは剥離力に対して弱く,エポキシ含浸して冷却すると,劣化してしまうことが問題となっている。線材の仕様として報告されている剥離力は
数10 MPaと比較的高いが,1 MPa以下でも剥離するとの報告もあり,多くの場合には接着力の弱い含浸剤を用いるか,含浸しないコイル作製が必要との認識が多くを占め
ている。本報告では,すべてのコイルを含浸しているが,劣化なく高い特性を示している。その詳細な技術は公開されていないが,全体の高温超伝導技術の発展において
は,ある程度の情報共有も必要ではないかと思われる。


加速器(3) 3B-p01-p06 座長 和久田 毅

前半がLTS、後半がHTSの加速器用超電導磁石に関するものであった。
3B-p01土屋(KEK)ILC用4極磁石のモデル磁石を製作し評価。superferricタイプで製作コスト低減のために様々な工夫。初回トレーニングクエンチはIcの15%と低め。漏れ
磁場が8ガウスと大きい。
3B-p02岩崎(KEK) SuperKEKB衝突点用超電導4極磁石のモデル磁石を製作、評価。誤差磁場より巻線ずれを評価、300-400μm程度の位置ずれ。位置精度の目標は20μm、
今後改善。
3B-p03飯尾(KEK) LHCアップグレード向けにNb3Alコイルの巻線試作検討。ラザフォードケーブル導体の崩れにより線間絶縁破損や巻線精度低下が発生。
3B-p04長内(東芝) FFAG加速器全般および重粒子線治療装置用のラディアルセクタ型の磁石設計について解説。リング直径10 m程度。磁場設計によりさらに小さくなる。
3B-p05小柳(東芝) FFAG加速器をY系テープで実現するために鞍型コイル試作検討。3次元巻線をするため熱硬化樹脂を利用し巻線。超音波加熱ではIcが劣化、ヒータ
加熱では劣化なし。
3B-p06大竹(京大)RE系テープでレーストラックコイルを製作し、多極磁場成分をサーチコイルで計測。Bi系線材にくらべ磁場減衰が小さい。


11月11日(金)
C会場 9:30-15:00

HTS/その他超伝導体 3C-a01-07 座長 井上 昌睦

本セッションでは、超電導バルクを中心に7件の報告が行われた。
3C-a01:杵村(東大)らは、低圧純酸素雰囲気下での結晶育成に加え、低酸素圧下でのポストアニールを行うことにより、空間均質性の高い臨界電流特性を有する
バルク体が得られることを報告した。ポストアニールの追加によってバルク全体のTcが改善されることも確認されている。
3C-a02:荒屋敷(岩手大)らは、四角形状のGd系超電導バルク(45.2 mm角×15 mm厚)の着磁特性について報告した。成長領域境界(GSB)がバルクの対角線上に配向
した場合と各辺の中心に向かって配向した場合のそれぞれについて、補足磁場の振る舞いを調べたところ、ゼロ磁場冷却着磁においては成長領域で若干補足磁場の高い
領域が観測されたが、パルス着磁においてはGSBによる違いは見られなかった。
3C-a03:石塚(新潟大)らは、円柱形状のDyバルク(30 mmφ×10 mm厚)にパルス着磁を行った際の磁場侵入挙動について報告した。外部磁場(5 T)の印加回数の
増加に伴い新たな磁場の侵入量が低減する様子を確認するとともに、磁場の侵入量とバルク体の温度上昇とに強い相関があることを示した。
3C-a04:筑本(ISTEC)らは、Co置換及びP置換を行ったBaFe2As2(Fe122)単結晶の臨界電流特性について報告した。P置換試料(BaFe2(As0.65P0.35)2Tc=29.2 K)
では、磁気緩和速度が1 T以上で急激に上昇し、Jcが磁場に対して減少し続けるのに対して、Co置換試料(Ba(Fe0.925Co0.075)2As2Tc=23.3 K)では、
磁気緩和速度が高磁場ではむしろ遅くなり、Jcも磁場に対して上昇する傾向にあることが確認された。これらの結果より、Co置換試料においては、高磁場において磁場
誘起型のピンが効き始めているとの見解を示している。
3C-a05:一瀬(電中研)らは、基板からの酸素の侵入が払拭されると期待されるフッ化物基板CaF2(100)を用いてFe(Te0.5Se0.5)薄膜を作製し、その超電導特性
及び基板界面近傍の微細構造について報告した。従来報告していた酸化物基板上の薄膜よりも高いTcが得られており、その値はバルクと同等かそれ以上とのことであった。
3C-a06、a07にて松田、佐保(日立)らは、新しい着磁技術により、手のひらサイズの超小型超電導バルク磁石を実現したとの報告を行った。常温ボアを有するソレノイド
型超電導磁石を用いて超電導バルク(外径60 mm、内径35 mm、厚さ20 mm×3層)を着磁した後、当該超電導バルクを用いて超小型超電導バルク(外径20 mm、長さ20 mm)
を着磁する手法により、コールドヘッドからの距離を50 mm程度まで短くすることに成功している。世界最小、最軽量、少消費電力の冷凍機と組み合せることにより、
バッテリーを備えたキャリーバックに装置一式を同梱して搬送・使用できることを示した。


熱伝達・沸騰 3C-a08-12 座長 大平 勝秀

3C-a08:達本(原子力機構):垂直円管における液体水素の強制対流熱伝達特性の加熱長さの影響について報告があった。核沸騰限界熱流束は、加熱長さが2倍に
なると30%小さくなり、加熱長さの影響は発表者らが提案する表示式の加熱長さの項で表せることが示された。発熱体(伝熱管)の加熱速度(電流上昇速度)に
ついて議論があった。
3C-a09:竹上(京大):垂直支持、水平支持した電流加熱円管内を流れる液体水素の強制対流沸騰熱伝達に及ぼす重力方向の影響について報告があった。管内径は
3、6、9 mmとして実験を行い、管径が大きい場合、核沸騰限界熱流束は水平支持の方がやや小さい値をとっている。管径が小さい場合、核沸騰限界熱流束は水平支持
・垂直支持で同じ値をとっており、管径が小さく、流速が大きいほど重力の影響は少ないことが示された。加熱開始時における測定温度の振動原因について議論があった。
3C-a10:塩津(京大):発表者らが液体水素強制対流熱伝達から得た核沸騰限界熱流束の表示式を液体窒素に適用した結果について報告があった。管径3、6 mmの液体
窒素実験で得られた結果を表示式に適用し、液体窒素にも適用可能であることが示された。伝熱管の管径の影響について議論があった。
3C-a11:樋川(京大):高温超電導体の過電流特性を明らかにするため、過渡加熱法によりMgB2線材の過電流特性を評価した結果について報告があった。MgB2線材に
流れる電流とシースに流れる電流の分流比について関係式を導出し、冷却温度等との関係が示された。
3C-a12:高田(筑波大):実験槽の容積、可視化窓の口径を大きくした改良クライオスタットを用いた微小重力環境中のHeⅡ膜沸騰実験結果について報告があった。
微小重力中で大きな泡が合体分離を繰り返す現象が高速度ビデオカメラの映像で示された。微小重力中での蒸気膜からの熱除去メカニズム、熱流束計算法について
議論があった。


MgB2(3) 3C-p01-06 座長 木内 勝

「3C-p01:前田(日大)」硼素の均一化と空隙を制御する為に、BCl3, H2及びCH4から高周波プラズマ法を用いて炭素コート硼素粉末を作製し、その硼素粉末と
比較的大きなMg粉末からMgB2線材を作製した。4.2 K, 10 Tにおける臨界電流密度Jcは2.7×108 A/m2で、この値はアモルファス硼素粉末やSiC添加の場合と同レベル
となり、この炭素コーティング手法の有効性を示した。
「3C-p02:田中(東大)」ex-situ法MgB2多結晶体の結晶間結合の強化のためには、Mg融点以下の温度で合成したMgB2粉末を用いることが有効で、更なる強化のために
今回ボールミルプロセスを追加しMgB2バルクを作製した。手粉砕に比べると、充填率の向上は僅かであるが、コネクティビティが28%と高く、これを反映して20 K、
自己磁場においてJc = 4 × 109 A/m2が得られ、この手法の有効性を示した。
「3C-p03:伊藤(東大)」MgB2バルク作製時に生じる空隙等によるJc低下を改善する為に、MgB4を介してMgB2バルクを作製し高密度化を行った。微細組織観察から
一般的なin-site法MgB2に比べて、MgB4を介したMgB2の方が空隙は大きく減少し、その結果充填率が向上し、20 K、自己磁場中で高Jc = 3.4 × 109 A/m2が得られる
ことを明らかにした。
「3C-a04:山本(東大)」MgB2チルト薄膜を用いてab平面内に流れる電流JcLab平面+c軸に流れる電流JcTを評価し、マルチバンドと電流輸送特性の関係について調べた。
この2種類の電流の比(JcL/JcT)が、YBCO薄膜の場合は温度の増加と共に減少するが、MgB2の場合は温度の増加と共に増加し、このようなMgB2の振舞いは、ピンニングに
由来するものではなく、マルチバンドや結晶粒界によるものであると指摘した。
「3C-p05:佐々木(岩手大)」市販のステンレス製フランジと銅製ガスケットを用いたカプセル法で直径20、30及び38 mmφのMgB2バルク体を作製し、捕捉磁場と臨界電流
密度の関係を報告した。補足磁場はバルク体の大きさに比例して増加が期待できるが、測定結果はサイズに関わらず同程度の捕捉磁場となった。原因はバルク体のサイズ
増加に伴うJcの低下で、均一なJcを持つバルク体作製には、カプセル法を更に改良する必要があると指摘した。
「3C-p06:渡辺(九大)」CuNiシースMgB2線材を用いた液体水素用超電導液面計の動作試験について報告した。特に省電力化のためには線材の細線化が有効であること
から、以前から用いていた線径0.155 mmから0.0925 mmに変更した。液体ヘリウム及び液体水素を用いた液位上昇と液位下降のセンサーの反応は良好で、この温度センサー
の実用化が可能であることを示した。


11月11日(金)
D会場 9:30-14:30

A15(2) 3D-a01-06 座長 北口 仁

A15(2)では6件の報告があった。
3D-a02 菊池ら(NIMS)はTi化合物分散ブロンズによるNb3Sn線材について報告した。ブロンズの加工性を維持しつつ高Jcにつながる
高Sn濃度を実現させるため、Sn源としてCuSnTi相を微細分散させる手法である。線材設計や熱処理の最適化を進めることで一層の
特性向上が達成されると期待できる。
3D-a01 安藤ら(東海大)はTa,Tiを添加したSnシートを用いるジェリーロール法Nb3Sn線について報告した。フィラメント細線化や多芯化が
当面の課題と思われる。こちらも、Nb3Sn線材製造法の新しい選択肢として発展が期待される。
他の4件は歪(応力)効果にかかわるものであり、A15線材において歪(応力)効果が重要な技術的課題であるということであろう。


磁気冷凍 3D-a07-11 座長 春山 富義

3D-a07:平山(阪大)らによる報告で、4 K付近でも高い効率が期待できるHoErN, ErN等の熱伝導測定結果が示された。
(Q)ErNの熱伝導度は他に比べ低いが4 Kの冷凍性能が良いのは? (A)比熱が大きいことによると考えられる
(Q)望んだ粒径はできるか? (A)もともとが球形なので可能
3D-a08:李(NIMS)らによる磁気冷凍機再生器形状に関する数値計算である。プレート型と粒状型を比較している。
(Q)プレートと粒の比較としているが、何を比較パラメータとしているのか? (A)Packing densityを同じとしている。
(C)プレートは圧力損失が小さいので、エントロピー発生低減に有利なのだろう
3D-a09:山田(金沢大)らによる報告で、LaFeSi系化合物の元素置換の結果である。特に室温付近の応用を考えた材料開発である。
(Q)Ga置換で格子定数は増加するが、Feが不純物として残っているのでは?(A)不純物として残っている。熱処理条件などを考慮
3D-a10:門間(千葉大)らによるAMR(能動的蓄冷型)室温磁気冷凍の性能解析に関する報告である。キューリー温度を-5~-10℃シフトさせたGdの多層構造にしている。
(Q)-10℃シフトさせる多層では性能が劣化しているが? (A)端部と外部との熱交換が-10℃の構成では効果ないことによる
3D-a11:下地(東工大)らによる磁石連続回転型室温磁気冷凍機のパラメータによる特性への影響評価である。ロータリーバルブの初期角度は磁性体の励磁時期と
冷媒供給のタイミングを変えることができる。
(Q)初期角度を6°と21°では6°の方が性能がよいということは? (A)励磁前熱交換に時間をかけると1サイクルでの総合的な熱交換としては不利


重力波望遠鏡 3D-p01-04 座長 高田 卓

セッション「重力波望遠鏡」は、大型低温重力波望遠鏡(LCGT)の低温設備における進展に関する発表が連番で行われた。
まず、「3D-p01鈴木(KEK)」の中で、LCGTの計画全体について概要・スケジュールが述べられ、極低温化する事のメリット、並びにその課題について解説され、
続く2講演「3D-p02,03木村(KEK)」の中で、低温設備の設計と低振動冷凍機ユニットの試作機による試験について解説された。この中で、LCGT の前哨実験である
CLIOにおいて蓄積された低振動技術の生かし方、また、CLIOでは採用された材料が入手できなくなった為の代替方法などに話が及んだ。最後の講演「3D-p04榊原
(東大宇宙線研)」では、前講演において解説された試作機の試験結果を元にした、LCGTの初期冷却時間のシミュレーションと冷却時間低減案について解説され、
黒化処理を施し、放射冷却を積極的に用いることで、25日程度で冷却できるという結果が発表された。また、黒化処理方法の候補であるDiamond Like Carbon の
極低温下におけるEmissivity の測定結果についても紹介された。最終日の最終セッションにも関わらず、大勢の参加者が集まり、LCGTの製作、メンテナンス方法
など、具体的な技術的課題について情報交換が行われた。